個人年金の種類はひとつではありません。契約者のニーズに合わせて、さまざまな種類のものが用意されています。ここでは代表的な個人年金の種類と、それぞれの特徴を個別にご紹介します。自分にはどのタイプの個人年金が合っているのか、チェックしてみましょう。
定額個人年金保険とは、将来受け取ることのできる年金額が契約時に確定するタイプの個人年金のことです。スタンダードな定額個人年金保険として代表的なものは以下の3種類です。
それぞれのタイプの定額個人年金保険の特徴について、以下でご紹介します。
終身年金は被保険者(=年金受取人)が生きている限り、一生涯年金を受け取れるタイプの定額個人年金保険をいいます。
終身年金のメリットは、長生きをすればするほど受け取ることのできる年金の総額が大きくなることです。そのため、長生きリスクに備えるのに適した保険といえるでしょう。
一方、他のタイプの定額個人年金保険より保険料が高めに設定されているため、早期に亡くなると返戻率が低くなったり元本割れする場合があります。
年金の受け取り期間中に被保険者が死亡した場合、年金の支払いは終了します。遺族への年金支払いはありません。
被保険者(=年金受取人)の生死に関係なく、契約時に決めた一定期間だけ年金を受け取れるタイプの定額個人年金保険です。
終身年金とは異なり、年金の受け取り期間中に被保険者が死亡した場合でも遺族に年金が支払われるのが特徴で、家族に年金を残すことができるといったメリットがあります。
一方、契約時に決めた一定期間終了後は年金の支払いは終了するため、長生きリスクに備えるのには適していません。確定年金は60歳からの10年間を受取期間としたものが最も一般的です。
公的年金は原則65歳から受給が始まるため、60歳で定年を迎える人などは公的年金が支給されるまでのつなぎ資金として、確定年金を活用しているケースが多いようです。
有期年金は被保険者(=年金受取人)が生きている限り、契約時に決めた一定期間(10年または15年が一般的)だけ年金を受け取ることができます。
受け取れる期間が限定されており、生存中のみ年金が受け取れる仕組みであるため、有期年金は個人年金保険のなかで最も保険料が安いことが一般的です。さらに満額を受け取ることができれば確定年金より年金額が多くなるというメリットもあります。
ただし終身年金と同様、早期に亡くなると返戻率が低くなったり元本割れする場合があります。
終身年金と同様、年金の受け取り期間中に被保険者が死亡した場合、年金の支払いは終了し、遺族への年金支払いもありません。
将来受け取ることのできる年金額が契約時に決まるので安心
終身年金なら、生きている限りずっと年金を受け取ることができる
確定年金は、遺族にも年金を残すことができる
有期年金は、保険料を安く抑えることができる
インフレになっても、将来受け取れる年金額は増えない
確定年金や有期年金では、長生きリスクに備えることは難しい
終身年金や有期年金は、早期に亡くなると元本割れや返戻率が低くなる場合がある
終身年金や有期年金には「保証期間」がついた商品も多くあります。
これらの個人年金に保証期間が付くことで、保証期間中は被保険者の生死にかかわらず年金が受け取れる仕組みとなっており、終身年金や有期年金の保障を手厚くすることができます。
被保険者(=年金受取人)が生きている限り、一生涯年金を受け取れることはスタンダードな終身年金と同じです。それに加えて、保証期間中は被保険者の生死に関係なく年金が受け取れることが特徴です。
被保険者の生存中は一生涯年金を受け取れるうえに、死亡しても保証期間中であれば遺族に年金が支払われるので安心感があります。ただし、保証期間終了後すぐに亡くなると、年金の受取総額が払込保険料に満たない場合もあります。
被保険者(=年金受取人)が生きている限り、契約時に決めた一定期間だけ年金を受け取れる仕組みは通常の有期年金と同じ。さらに、保証期間中は被保険者の生死に関係なく年金を受け取けとることができます。
満期まで生きていれば確定年金より多く年金がもらえるうえに、死亡しても保証期間中なら遺族に年金が支払われるので安心です。
一方、保証期間終了後の年金受け取りは被保険者が生きていることが条件なので、早期に死亡した場合は年金の受取総額に対して保険料が割高になることもあります。
変額個人年金保険は、支払った保険料の運用実績によって将来受け取ることができる年金額、死亡給付金額(年金受取開始前に亡くなった場合に支払われる)、解約返戻金が変動する保険商品です。
年金原資(将来受け取る年金額の元手となる資金)は特別勘定とよばれる勘定で運用・管理されます。特別勘定とは、変額個人年金のように運用実績に応じて将来の年金額や給付額が変動するタイプの保険を運用・管理するための勘定をいいます。
定額個人年金保険のように運用実績にかかわらず将来受け取る年金や給付の金額が契約時に確定しているタイプの保険の勘定(以降、一般勘定)とは分けて管理されています。
特別勘定は投資信託などの金融商品で運用される仕組みとなっており、契約者は複数の金融商品のなかから任意のものを選択できます。契約時に選択した金融商品は、保険料の払込期間中であれば種類や割合を変更すること(スイッチング)も可能です。
変額個人年金保険は運用が好調であれば高い収益が期待できるのが最大のメリットです。その反面、運用が不調の場合は元本割れするリスクもあります。
年金受取総額には最低保証が付いているものもありますが、解約返戻金は最低保証のないものがほとんどです。
また変額個人年金保険は定額個人年金保険と異なり、運用のための諸経費がかかるといった特徴もあります。契約初期費用、運用関係費用、保険関係費用などの経費が契約者の負担となり、積立金から控除されます。
契約者が金融商品を選んで自ら運用することができる
運用がうまくいけば、大きな収益を得ることができる
運用が不調だと、払い込んだ保険料が元本割れするリスクがある
運用のための諸経費は契約者負担となる
定額個人年金保険との違いを「運用利率」「元本保証」「リスク負担」「インフレ対応」の4つの観点から比較できるよう、表にまとめてみました。
定額個人年金保険 | 変額個人年金保険 | |
---|---|---|
運用利率 | 契約時に確定 | 運用実績によって変動 |
元本保証 | 受取年金額の最低保証あり | 受取年金額の最低保証はないものが一般的 |
運用方法 | 保険会社が一般勘定にて運用 | 契約者が任意の特別勘定を選んで運用 |
リスク負担 | 契約者 | 保険会社 |
インフレ対応 | 可 | 不可 |
変額個人年金保険と定額個人年金保険で最も大きく異なる点は、運用利率の決まり方です。
定額個人年金は契約時に保険会社が決めた運用利率で確定しますが、変額個人年金は運用期間が終了するまで運用利率が確定しません。運用実績次第で払い込んだ保険料を大きく上回る場合もあれば、元本割れするリスクもあります。
また定額個人年金保険の場合、確定年金や保証期間付きの終身年金・有期年金では年金受取額の元本の最低保証があります。一方、変額個人年金保険は運用実績が悪ければ年金受取額が元本割れしてしまうリスクがあります。ただし変額個人年金保険のなかには年金受取額の元本の最低保証が付いている商品もあるようです。
運用方法にも違いがあります。定額個人年金保険は契約している保険会社が一般勘定で運用をおこないます。一方、変額個人年金保険は契約者自身が運用をおこないます。そのため変額個人年金保険では、運用している特別勘定の価格変動リスクは契約者自身が負うことになります。
インフレ対応の観点では、変額個人年金保険にメリットがあります。インフレになればその分運用実績もよくなる可能性が高いからです。その反面、定額個人年金は契約時の運用利率で固定されているため、せっかくインフレになっても受取年金額に反映されることはありません。
以上の違いをふまえると、変額個人年金保険、定額個人年金保険それぞれに向いている人は以下のとおりです。
変額個人年金保険に向いている人
定額個人年金保険に向いている人
それぞれにメリットとデメリットがあるため、どちらのタイプの個人年金が自分に合っているのかよく検討したうえで、契約するとよいでしょう。
外貨建て個人年金保険とは、日本円以外の通貨で保険料を支払ったり運用したりする個人年金のことです。為替変動によって、将来受け取ることのできる年金額、死亡給付金額、解約返戻金が変動します。そのため、変額個人年金保険の一種ともいえます。
変額個人年金保険同様、為替の変動によって高い収益性が期待できる反面、元本割れのリスクもあるといった特徴があります。また外貨は円建てで運用するより金利が高いため、外貨建てでの運用利率は定額年金より高いのが一般的です。
通貨の種類は商品によってさまざまですが、米ドル、ユーロ、豪ドル建ての商品が多く見られます。円建てで保険料を支払う場合、為替変動によって支払う保険料も変わりますが、日本円で支払う保険料が一定額に決まっている商品もあります。
また変額年金個人保険と同じで、運用のための諸経費(契約初期費用、運用関係費用、保険関係費用など)がかかることも特徴です。さらに払込時や受取時に円から外貨に両替する際には、為替手数料がかかることも知っておきましょう。
為替の動向に敏感な人や、外貨で積極的に運用したい人に向いている個人年金といえます。